僕は昔写真マニアだった。いや、今振り返るとカメラマニアだったのかも知れない。絵心があり、県展などに何度も上位入賞を果たす姉と違い、絵心のかけらもない僕にとって、写真というものは、唯一姉に対抗できる「表現ツール」だったといえる。親戚にもらったミノルタの一眼レフを手始めに、一時は数台のカメラを所有していた。写真の技術を習得するために2年間写真専門学校にも通った。卒業後、少しの間広告写真の世界に身をおいたが、自分の才能のなさと旧態依然とした徒弟制度に嫌気がさし、1年ほどでやめてしまった。もう30年も前の話である。今では腕もすっかり錆付いてしまい、素人写真しかとれない有様だ。
それでも、デジカメが普及する前は一眼レフを中心とする数台のカメラを所持しており、今ももっているが、それを使うことはまずなくなっている。タイのような暑い国で、一眼レフのフルセットをかかえて歩き回る気にならないのと、特別な場合を除いて、撮影するのはスナップ程度のものであり、高スペックのカメラを使う必要がなくなったからだ。
デジタルカメラも、CASIOが子供だましの玩具を出したときから買い込み、メーカーは異なるが何機種かを買い換えた。そして今から5年程前、あるカメラと出会った。
CASIOのEXILIM S-1である。当時、デジタルカメラの画素数は300万画素が標準となりつつある中で、そのカメラは100画素という一時代前の画素数しかなかった。しかし、僕にとってはそれを補って余りある魅力があった。
ひとつはシャツの胸ポケットにいれてもじゃまにならないほどの薄型で大きさもカードサイズしかない事。もうひつ、僕にとって非常に魅力的だったのは、固定焦点カメラで、ズーム機能もピントの調整もない事だ。普通、デジカメにはた自動でピントを合わせる機能がついているが、これがためにシャッター半押しなどのテクを使わない限り、狙ったシャッターチャンスと実際に写るものにずれが生じる。ところが固定焦点カメラにはそのずれがない。狙った瞬間にシャッターが切れるのである。また、EXILIMの場合、画素数が少ないため、デジカメ特有の撮影後のメモリ転送の時間が短く、モータードライブのような連続撮影も可能である。
僕の持論だが、スナップの場合、撮りたいものがあったらまずシャッターを切る。それから構図や光の加減などをゆっくり考えてもう一度撮影するのがいいと考えている。ひとつの被写体に関して出来るだけ多くのカットを確保し、後でその中から一番いいものを選ぶというのも僕のやり方である。銀塩カメラの時代は仕事ならともかく、個人的スナップ程度でそんな贅沢はなかなか許されなかった。しかしデジカメだと、要らないものは消せばいいし、何カットとろうがフイルム現像代などのコストはかからない。
また、EXILIMは画素数が少ない分1枚あたりの消費メモリも少なく、256Mのメモリで
も1024×768のサイズなら1000枚は撮影出来る。数日の旅行程度であれば充分な量である。
EXILIMは、S-2,S-3と改良され、画素数も増え、ズーム機能もついた。だが、その分カメラの厚みも増し、反応速度も遅くなっている。これでは普通のデジカメであり、魅力を感じない。最近、仕事用に1000万画素のデジカメを買ったが、旅行のお供は相変わらずEXLIMである。一度壊れたが、修理して使っている。
写真はカタログより抜粋
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